元祖・駅ナカグルメ 駅そば
これまで仕事などで都市部はもちろん全国各地に行ってはご当地の名物料理や食材たちを味わってきたが、おそらく学生時代から数えるとこれまで断トツに回数が多いのは駅で食べる「駅そば」である。
小腹がすいたとき、長時間の移動で昼食などをゆっくりとれないとき、麺類が欲しいけど駅前のラーメン屋はきっと行列だろうな…と思ったときは駅そばと決めている。最近は関東でも駅構内の讃岐うどんの店が増えてきたけど、生まれも育ちも関東の筆者としてはつい「立ち食いそば」基準で考えてしまう。
待ち時間を利用して、時には次に乗る電車を一本ずらして、駅のホームや改札口周辺の店に飛び込む。経験上、店に入った時の香りや雰囲気で、おいしい店がどうかはなんとなく分かる。ベテランのおっちゃんかおばちゃんが仕切っている店はやっぱり安心感がある。
そばやうどんを持ち上げたとき、器からたちのぼるだしの香り、店内のあちこちから聞こえるすする音も慣れれば楽しい。がっつりいきたいときは大盛りにするなり丼セットを頼むのもいいね。ちなみに関東は基本的につゆが濃く、ざるそばに最適化された配合なので、温かい麺には、かき揚げなどのトッピング推奨、冷たい麺は「全つけ」でなく、箸で持ちあげたそばの3割ほど浸してすするのがおすすめ。関東以外の地域は全つけでむしろちょうど良いかも。
今は都市部や近郊でも「駅ナカ」グルメが充実しているけど、明治時代からあったといわれる駅そば。最古は明治時代の横浜駅(現・桜木町駅)とも、軽井沢駅、横川駅とも、諸説あり。最近は座れる店も多くなって女性でも入りやすく、交通系の電子マネーで決済できるし便利だけど、「○○そばの方~」と呼ばれて取りに行き、心の中で「いただきます」。空いた器を下げに行って「ごちそうさまでした!」「はーいありがとうございます!」このやり取りはずっと駅の原風景であってほしい。
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飯米衛「うまかった駅そば」※駅構内の店のみ掲載
個人的にイチオシのそば店。だしと麺のバランスがすばらしい。冬が旬の名物「岩のりそば」がおすすめ。両国に本店を構え、都営新宿線や東武東上線沿線に店舗が多い。東日本橋駅と馬喰横山駅の地下通路を通るときは寄ってしまう。
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首都圏の各鉄道会社が運営しているそば屋は多いが、私鉄では東急「しぶそば」、小田急の「箱根そば」が好み。
おしゃれな店が立ち並ぶイメージが強い東急エリアの駅ナカの一番いい立地がそば屋というのも興味深い。現在はほぼ椅子席だが渋谷の「本家しぶそば」には立ち食いカウンターが残っている(残念ながら渋谷駅再開発のため9/13閉店)。
「箱そば」の愛称で親しまれている「箱根そば」は、小田急の駅によっては2店舗ずつあり(新宿・新百合ヶ丘・町田・海老名)、小田急レストランシステムのホームページの一覧でも「箱根そば」が単独でトップに載っているという力の入れっぷり。
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品川駅構内の歴史ある駅そば常盤軒がリニューアルしたのが「きちりあん」。駅そばはもともと量がやや少なめだが、この店の「大盛り」は別格。かき揚げの大きさとの比較。単価が高めでもそれ以上にまんぷく、まんぞく。
吉利庵 冷やしかき揚げ(大盛)
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車内販売でおなじみ、NRE(日本レストランエンタプライズ)改め「JR東日本フーズ」運営のそば屋。比較的新しい形態の「そばいち」や「いろり庵きらく」は、かつおだしの香りが印象的で店内も居心地が良い。路線ごとに味わいもいろいろの「駅そば」(大江戸、濱そば、あじさい茶屋、中山道、野州そばなど)はみんなのソウルフード。
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首都圏以外で一番印象に残る駅そばは仙台駅の在来線改札口付近の「立ちそば 杜」。帰りの新幹線に乗る前は「牛たん通り」「すし通り」派よりは「立ちそば 杜」派(そもそもいるのかな…)。香ばしい海老が乗った「上かき揚げそば」が絶品。改札の外からも中からも入れて。店名の通り、リニューアルオープン後も立ち席のみというストロングスタイル。
立ちそば 杜
駅構内のうどん、ラーメンなどはまた別の記事で紹介したい。