飯米衛 記憶のグルメ

旨いものを求めて、ふらりふらりと

回転寿司で「地魚」を

「ごちそう」といわれて3つ挙げるとするなら、おそらく多くの人が入れるであろう寿司。私もごくたまに「回らないシース―」を食べに行くときは気合が入る。公演先などで寿司をごちそうになるのは「この仕事やっててよかった!」と心から思う瞬間。

 

ただ私が小さいころ、例えば近所の寿司屋から出前をとっても生魚の握りはあまり食べられず、「梅巻(細巻)」を中心に食べていた。ちなみに「一番好きな寿司は?」と聞かれると、定番の握り寿司や旬の地魚をついイキって答えてしまうが、心の中では、今も「梅巻」が原点。ちなみに今回は「梅巻」について語るわけではない。

 

おそらく昔は子どもが寿司の味を覚えるのは正月や法事での親戚の集まり、というのが多かったと思う。平成以降は寿司といえば「回転寿司」に連れて行ってもらう、というパターンもけっこう多いのではないだろうか。週末になると「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」などの店内外で、自由な雰囲気の子どもたちがはしゃぐ姿を観られるのもおなじみの風景。

 

ちなみに筆者が寿司全般が好きになったきっかけも「回転寿司」。近所にできた「かっぱ寿司」は当時は100円均一でベルトコンベアーではなく「水流」で桶を流すというちょっとゴージャスなスタイル。知っている層には年代がばれます。そもそも「かっぱ」という屋号は「水流」回転寿司という意味で創業者の発案だったそうだし、「特急レーン」も、今や多くの回転寿司店が採用する「タッチパネル」もかっぱ寿司が元祖らしい。

 

※回転寿司の歴史については、Traceのこちらの記事がとても簡潔で分かりやすいです

 

少し時が流れて、「回転寿司」のネタを意識し始めたのが、初めて行った「かっぱ寿司」のすぐ近くにあった「M」という回転寿司店。こちらはチェーン店ではなく、ベテランの職人さんが2~3人いて、回転レーンがなければおそらく普通の寿司屋というか、寿司屋が営業形態を「回転寿司」形態にするのがちょっと流行ったころなので、「M」もその1店だったかもしれない。「三崎直送生まぐろ」を看板メニューに、その日のおすすめメニューがホワイトボードに書かれていた。そして、レギュラーメニューに比べても、おすすめメニューの方が断然鮮度が良くて美味しかった。

 

10代のころは外食に行く機会ができれば2回に1回は「M」に家族で通ったが、しばらくして残念ながら閉店してしまった。大人になり、電車であちこち動いたり車を運転するようになってからは、他の店も開拓しようと時々雑誌で調べた(スマホよりずっと前の時代です)店に行ったが、今でも「M」の思い出が鮮明に残っていて、どんな店に行ってもつい、「M」を基準にしてしまう。

 

今はいわゆる「グルメ系」回転寿司専門に行く機会がほとんど。自分の中で勝手に決めている「良い回転寿司店」の基準は以下の6点。

 

・スタッフ同士の雰囲気が良い (=良い客対応、良い味に反映する)
・ベテランの職人さんが一定数いる (=技術面での安心感がある)
・その地域で水揚げされた魚介のネタが多い (=活きの良い地魚メニューが豊富)
・解凍品でないと思われるネタを多く提供している (=品質管理の信頼性)
・店内のにおいが正常 (⇔水回りの異臭、逆に過剰な消毒感はNG)
・タッチパネル式ではない (=経験上、飯米衛の鉄則)

 

このご時世、衛生的にいろいろ心配な部分もあるが、少なくともこの記事を書いた時点で寿司屋で「クラスター」が発生したというニュースを見たのは1回だけ。もともと食中毒対策が徹底しているというのもあると思うけど、好きだった「あの店」「この店」にまた行けることを心から願っている。

 

飯米衛 うまかった回転寿司 (東日本編)

 

回転寿司を調べて行くときは、まず「本拠地」や「店舗一覧」を確認するのがおすすめ。寿司ネタの傾向も分かるし、限られたエリアにしかない回転寿司店は旬の地魚に出会う絶好のチャンス。最近は東京都心への出店も目立つ。

 

◇北海道 ( )の地名は1号店または本拠  ※都内に出店(2020夏現在)

なごやか亭 (釧路)

花まる (根室) ※

トリトン (北見) ※

函太郎 (函館) ※

魚一心 (札幌)

活一鮮 (札幌)

ちょいす(登別)

とっぴー(札幌) ※

ぱさーる(札幌すすきの)

 

いわずと知れた海鮮王国北海道。いくつかの寿司屋は20代の頃仕事で訪れた際に先輩に連れて行ってもらい、「ご当地回転寿司」に目覚めてしまった。

 

知名度や規模、味の安定感から「北の回転寿司四天王」(筆者が勝手に名付けてすみません)ともいえる「なごやか亭」「花まる」「トリトン」「函太郎」はじめ、道内各地に本拠地を持つ回転寿司店がしのぎを削っている。わりとひらがなの店が多いのも特徴。

 

個人的には「なごやか亭」が第一の選択肢。車でないとアクセスしにくい店が多いが、むしろ経営戦略的には成功しているのかも。ちなみに都内ではないが、なぜか滋賀県内に2店舗ある。

 

◇東北~北陸 ❇︎都内に回転しない出店

うまい一丸鮨(秋田)

清次郎(盛岡)

うまい鮨勘(仙台)❇︎

弁慶佐渡)❇︎

粋鮨(富山)

海天すし(金沢)

 

やはり東北~北陸もレベルが高い。中でも佐渡に本店を持つ「弁慶」は別格だと思う。また、「清次郎」の「八幡平サーモン」は感動もの。宮城発祥の回転寿司といえば「平禄寿司」だがまだ本場の店には行ったことがなく、やはり「うまい鮨勘」が気になってしまう(こちらも回転の方は未経験)。そして新潟・金沢は激戦区と思われ、これから行ってみたい店がたくさんある。

 

◇関東~東海

銚子丸(千葉)

網元 伊豆 (横浜)

魚磯 (静岡 伊豆高原・富士)

大漁亭 (愛知 西尾)

 

関東~東海で「地魚」が美味しいと思ったのはこちら。「銚子丸」はとにかく接客が素晴らしい。回転寿司は1人で訪れるとどうしても孤独に感じることが多いが、最後までしっかりフォローしてくれて嬉しかった。クラシックな割烹風の外観が印象的な横浜の「網元 伊豆」は古き良き時代の寿司屋のような雰囲気で、昼は「にぎりずしランチ」+単品追加がおすすめ。

 

◇関東・番外編

茜屋すしぎん(宇都宮)

がってん寿司(埼玉)

 

「地魚」とは縁遠いはずの海なし県、栃木と埼玉からピックアップ。でも日本地図を大きく広げてみると、海なし県=海から遠いとは限りません。北海道の内陸部よりは近いんです。ちなみに「元気寿司」も宇都宮発祥。「がってん承知!」でおなじみの「がってん寿司」は巨大チェーンひしめく埼玉県でもしっかりと存在感を放っている。調べてみたらなんと回転寿司の祖、大阪・元禄寿司フランチャイズからスタートして、現在は北海道の「函太郎」もグループにしてしまう規模に。

 

◇東京・リーズナブル

もり一(山手線~中央・総武線沿線)

すし台所家(渋谷→三軒茶屋?)

ぎょしん (自由が丘)

 

各地に行くときには「たまの贅沢」という大義名分で行ってしまうグルメ回転寿司。でも時々都心の駅前にある回転寿司で1,000円前後の予算でさっと、という感じで行きたくなる。なにせ寿司はもともと日本が誇るファストフードですから。

 

「もり一」は各店舗「公式サイト」を持たないが、とにかく常連さんの投稿の数がすごい。大人気の神保町店や田端店はもちろん、総武線沿線にもいくつかある。錦糸町の駅ビルにあるお店に行ったところ、やや小ぶりのサイズでネタと赤シャリのバランスがピカイチ。1皿150~180円で江戸前感をたっぷり味わえる。「すし台所家」は学生時代に時々行くのが楽しみだったが、残念ながら渋谷の本店はじめほとんどの店が閉店。「孤独のグルメ」で唯一登場した回転寿司店である三軒茶屋店はなんとか残っていてほしい。

 

すっかり長文に…せっかくだからこの勢いで西日本の回転寿司も書きたいと思っていたけど、まだまとめられるほどには行けていないので、またの機会に。あと写真はあまりうまく撮れていないのでそれぞれの公式サイトをご覧ください。